TAKE YOU FOR A WALK

When The Setting Sun

価値観の自由遊泳


PB002279



現在の神奈川県において、もっとも街の開発が盛んな場所は、
第一に川崎市で、第二は海老名市だろうと思う。

駅前が街区となり、商業施設やタワーマンションが建設され、
その周辺には街の消費を担うべき住民の宅地が配備される。

そうした町の急激な変化により、
その土地の従来の人々の価値観と、新たな人々の価値観、

その両者の錯綜が、ひそかに起こる。



PB002286



90年代の変革による、新たな経済思想が広まり、
都会と郊外の乖離が進むなかで、

いつの間にか人々の価値観に大きなズレができていた。
開発の当初は、新旧両者の価値観は錯綜するが、

やがて圧倒的な量と勢いにより、
新住民の価値観がその街を支配するようになる。

海外では、ジェントリフィケーションという呼び方もあるようだけど、
日本では、時代の変化、時代の流れ、とされて片付けられる。



PB002281



現代の社会システムの是非はともかく、
そういう町の従来からの住民(先住民)のなかには、

街を支配する価値観の変化に対応できない人がおり、
なかでもとくに若者にとって、それは深刻な問題になりかねない。

彼は、家庭の中では旧来の価値観に縛られながら生きるが、
外出して他者と関係をもつときは、新しい価値観に合わせないといけない。

内と外で常に価値観のスイッチングをする必要があり、
そのことに疲労し、結局は上手くはいかず、

ついに自分という存在の心の基盤を失う。



PB002282



新しい価値観に魅力はあるが、古い価値観に正しさも感じる。
あるいは、どちらにも束縛されたくないとも感じる。

神奈川だけでなく、東京郊外での再開発が進むにつれ、
そういう境遇に陥る人が、ますます増えると思うし、

おそらく過去の時代にも、たくさんの人が
そうした境遇のなかで生きてきたのかもしれない。

そうした状況に陥った場合、どう行動するのが良いのか、
私にはその答えは分からない。

ただ、自分はいまどこに立っているのかを、
自分自身で納得しながら考えるうえで、助けになってくれること、

そのひとつとして、読書があると思う。

どんな本を読むのも良いと思う。
本屋にいって、片っ端からページをめくってみて。



PB002283



古い価値観を選ぶべきか、新しい価値観を選ぶべきか、
むしろ、そのどちらでもないようで、そのどちらでもあるような、

その中間ではなく、折衷でもない、
選択肢でなく、包摂肢のようなものが、

スイッチングするのでなく、自由遊泳するような、
そういう未来に進んでいきたい。



PB002284



(ヨーロッパの民主主義化は)「風土的に階級的に制約された
人種成立の諸条件から、ますます離れてゆくということである。
すべての人間には彼の属する特定の環境があって、

それが数世紀のあいだ同じ要求をもって
彼の心身にその特性を刻印するものであるにもかかわらず、
この特定環境からますます独立してゆくということである。

すなわち、本質的に超国民的な一種の遊牧民が
しだいに出現してきていて、……」

フリードリヒ・ニーチェ 『善悪の彼岸』(1886年) 新潮文庫より



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