Ce n'est rien.

Railtrip Landscape ProsePoetry

るなぱあく、波宜亭、臨江閣


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前橋にある、「日本一なつかしい遊園地」こと、
るなぱあく。

お子さまたち大喜びの小さな遊園地には、
この日も、笑顔で遊びまわるたくさんの親子の姿があった。

「るなぱあく」という愛称は、
前橋出身の詩人・萩原朔太郎の詩に由来する。



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遊園地(るなぱあく)にて

遊園地の午後なりき
楽隊は空に轟き
廻転木馬の目まぐるしく
艶めく紅のごむ風船
群集の上を飛び行けり。



明るき四月の外光の中
嬉嬉たる群衆の中に混りて
ふたり模擬飛行機の座席に乗れど
君の円舞曲(わるつ)は遠くして
側(かた)へに思惟するものは寂しきなり。

萩原朔太郎 『氷島』 「遊園地にて」より抜粋



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るなぱあくの前身である前橋市中央児童遊園は、
1954年の開園なので、朔太郎はこの遊園地を知らない。

彼の時代、この場所には波宜亭という茶店があったそうですが、
大正時代のいずれかの時期に無くなってしまった。


その昔よく逢曳したる
公園のそばの波宜亭
今も尚ありや

波宜亭の柱に書きし恋の歌
かの頃の歌、今も忘れず

その昔
身をすりよせて君と我と
よく泣き濡れし波宜亭の窓

萩原朔太郎 「一群の鳥」より抜粋 習作集第八巻 萩原朔太郎全集第2巻 筑摩書房



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郷土望景詩に歌ったすべての古蹟が、
殆んど皆跡方もなく廃滅して、
再度また若かった日の記憶を、
郷土に見ることができないので、
心寂寞の情にさしぐんだのである。

全く何もかも変わってしまった。



… 波宜亭も、既に今は跡方もなく、
公園の一部になってしまった。

萩原朔太郎 「物みなは歳日と共に亡び行く」より抜粋 藝苑 萩原朔太郎全集第2巻 筑摩書房



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伝統の木馬など、あれこれ見てまわりたかったのですが、
賑わう日曜の午後の遊園地に、私はあまりにも場違いで、

ホットラテをいれてくれたカフェのお姉さんとお喋りしたあと、
トンネルをくぐって、おとなりの臨江閣へ。

臨江閣は、前橋が明治時代に県庁となったとき、
その迎賓館として、地元の有力者たちにより建てられたそうです。

萩原朔太郎は1919年に、臨江閣で結婚披露宴をおこなった。
そのときのツーショット写真は、前橋文学館の展示で見ることができます。

なんとも居心地の微妙そうな朔太郎の顔。
彼の写真は大抵そんな感じで、この世の外にいるような。



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